吹奏楽部に入部した一年生は、俺を含めて十二人。俺以外は全員、何か楽器を習っているとか中学校で吹奏楽部だったという。

「努力をすれば、どんな楽器もうまくなれるよ。だから安心して?」

周りの差に不安を感じた俺に、先輩が優しく話しかける。そのことで、ますます先輩を好きになった。

俺はフルート担当になり、同じくフルート担当の人たちに教えてもらいながら、少しずつ吹き始めた。

しかし、初心者ということもあり、なかなか上達しない。みんなと合わせることになっても、俺だけズレてしまったり、うまくついていけなかったり、チームワークを乱してしまう。

みんなのまたかよ、と言いたげな視線が突き刺さり、俺が俯いたその時、先輩が口を開いた。

「私が特訓してあげる。個別練習しよう」

その言葉に、他の先輩たちは安心したような表情になった。

「夕日が教えるなら絶対大丈夫だね!」

そんな声があちこちから聞こえてくる。

「えっ…でも、先輩はフルートじゃなくてホルン担当じゃないですか。大丈夫なんですか?」