思い返せば、中学校の吹奏楽部は朝から晩までずっと練習をしていた。ハードな練習に耐えきれず、辞めてしまった部員も少なくはない。

そのことが、吹奏楽部に入部するなと言っているような気がした。

肩を落とし、ため息をつく俺に誰かが話しかけた。

「ねえ、あなた楽器に興味あるの?」

振り向くと、そこには先輩がいた。さっきまで届かない距離にいた先輩が近くにいる。胸の高鳴りが舞台を見ていた時以上に、激しさを増した。

「は、はい…。えっと、今日の演奏を聴いて……」

俺はドキドキしながら素直に言った。

先輩は嬉しそうに笑う。

「本当!?嬉しい!あなた、一年生よね?よかったら、吹奏楽部に入らない?」

先輩のその言葉は素直に嬉しかった。しかし……。

「俺、中学校では吹奏楽部じゃなかったんです。初心者なのにいいんですか?」

「いいのよ。だって、どんな有名な音楽家だって最初は初心者だったんだから」

その言葉に安心し、俺は吹奏楽部に入部することを決意した。