「先輩、飛行機の時間ってもうすぐじゃ…」

そう言う俺に、先輩は涙を浮かべた目で俺を見つめた。俺の胸が高鳴る。

「ねえ、ぎゅっと抱きしめて!いっぱいキスして!あなたと過ごした日々を、いつでも思い出せるように…。全てが無かったことにならないように…。最後に思い出がほしいの」

体中が熱くなる。答える前に、行動に移していた。

先輩を優しく、それでいて強く抱きしめる。先輩の肌の柔らかさが、温もりが、頭の中に記憶されていく。

先輩に上を向かせ、キスをする。唇だけでなく、おでこに、瞼に、頰に、耳に、首すじに……。考えることなく、キスを落とす。

先輩の目から、涙がこぼれる。俺の目からも、涙がこぼれる。

今まで過ごしたどんな思い出よりも、色づいて儚い思い出が今できあがった。

「……映画と真逆だわ……」

「そうですね……」

夢のため、互いのため、未来のため、別れを決めた。でも、互いに愛し合った記憶は、永遠であることは確かだからーーー……。