「……そうだね。このままじゃ、お互いに壊れちゃうね」

しばらくの沈黙の後、先輩は泣きながら言った。

俺たちは、ずっと抱き合っていた。



先輩が旅立つ日がやって来た。俺を始め、吹奏楽部の部員や、先輩と仲のいい友達、大勢の先生が見送りに空港に集まった。

「オーストリアに行っても頑張ってください!」

「手紙ちょうだいよ!」

「何かあったら、すぐに連絡してくださいね」

涙を流しながら、先輩も後輩も同級生も声をかける。

「ありがとう…。頑張って笑顔で帰ってきます」

夕日先輩は、優しい笑顔を向ける。その姿を見て俺は安心した。これで、よかったんだ。この物語を聞けば、誰もがバッドエンドだと言うかもしれないけれど、俺の胸には寂しさ一色ではなく、先輩に幸せになってほしいと思う気持ちがきちんとある。

「天くん、ちょっといいかな」

先輩が後ろの方にいた俺の手を掴む。後輩たちがざわついた。

「話したいことがあるの。こっちに来て?」

後ろから驚きの声が上がる中、俺は先輩に手を引かれ、みんなから離れた。