先輩は、楽器の中ではピアノが一番好きだと言っていた。なので、部活が始まる前に誰よりも早く音楽室に来てピアノを弾いている。

その音色に、誰もが心を揺さぶられ、魅了されていく。俺もその一人だ。

しかし、俺は先輩自身に魅了されている。だから、二人きりになるとーーー……。

「先輩」

俺は先輩に近づき、その白くて柔らかな頰にそっと口づける。

「天くん…!んっ!」

俺の方を向いた先輩を捕まえ、先輩の唇と俺の唇を重ねる。

最初は優しく、しかしキスはどんどん激しくなっていく。互いに舌を絡め合い、離れない。

そして、酸欠になり口と口が離れる。いつものパターンだ。

「もう!学校ではしないって約束でしょ?誰かに見られたら…」

顔を赤くして俺を睨む先輩がかわいくて愛しい。

「そんなこと言うと、またしたくなるんですよ」

俺が意地悪にそう言うと、先輩は「バカ」と呟いてピアノを再び弾き始めた。

俺と先輩は付き合っている。みんなには内緒だけど。