「……本当の気持ち、言ってもいい?」

その表情は真剣で、俺は頷いた。

「私は、天くんとこうして付き合うことができて、本当に幸せよ。毎日が奇跡みたいに楽しくて、ささやかな幸せにあふれていて……。天くんが私を好きになってくれたことが嬉しいし、私も天くんを好きになれて幸せ」

「……俺も先輩と付き合えて幸せです。ずっと届かないと思っていた人と、こうして当たり前のように話せたり、デートできたり、毎日が幸せです。先輩のおかげで吹奏楽部がもっと好きになれたんです」

先輩の気持ちが、言葉が、とても嬉しい。自然と俺も気持ちをぶつけていた。

「私たち、ずっと繋がっていられるよね?」

先輩が訊ねる。俺は「はい」と答えるはずだった……。

心の中である考えが生まれる。それは始めは小さかった。しかし、だんだんと大きくなっていく。

俺は曖昧に頷くしかできない。先輩は、少し傷ついた表情で走って帰っていった。