ハカセが仕事をしている間、ボクはトラが盗み食いをしないように見張りながら、記憶メモリの整理をすることにした。


トラは太っている癖に筋肉も発達しているため、テーブルの上に置いている食べ物にはすぐにありつけてしまうのだ。


だからボクは様々なシミュレーションを試した結果、キッチンの上の戸棚に乾物類を置くことにし、冷蔵庫には猫の爪でもちぎれることのないベルトを取り付けることにした。


以来、トラは盗み食いをすることが困難になり、ますますボクが嫌いになったみたいだ。


「ニャー」


ダイニングテーブルの席につきながら記憶メモリの整理に集中していると、横からトラが鳴いてきた。


こういう時のトラの猫なで声は、87%の確率で「お腹が空いた」という意味だ。


「我慢してクダサイ、トラ。タイシボウリツが規定値を超えてシマイマスヨ?」

「ニャー」


構わん、とばかりに鳴き続けるトラ。


仕方がないため、タイシボウリツが上がる確率が極めて低い、ほうれん草クッキーを一枚だけ食べさせることにした。


このほうれん草クッキーもボクが考案したもの。


バターや小麦粉といった高カロリーな食材を一切使用していない、トラ専用のおやつだ。