ハカセについても少し紹介しておこう。


ハカセは(あんな感じだけど)研究所トップの研究グループをまとめるリーダーでもある。


研究対象はもちろん、ボクたちアンドロイド。


アンドロイドを研究すると言うよりかは、あらゆる学問の領域に踏み込みながら、そこで得た研究結果をもとにアンドロイドを作っている、といった方が正しいかもしれない。


だから、ハカセは仕事中にたくさんの学者と連絡を取り合っている。


つけたり取ったりするのが面倒になり、とうとう耳の中に内蔵してしまった小型イヤホンでやり取りをしているため、はたから見れば独り言を言っている人だ。


「内蔵しなければよかった」と、いつかのハカセは言っていた。


「居留守ができない」とも。


確かにイヤホンを内蔵する手術を終えた後から、ハカセの平均睡眠時間は約2時間も減り、術後3日目から目下が黒くなり始めたというデータが記憶メモリに残っている。


ハカセも「タボウ」なニンゲンなのだ。


「タボウ」という言葉の意味も実はよくわかっていないが、これもまたハカセが教えてくれた言葉だ。


目の下にクマができるニンゲンはだいたい「タボウ」らしい。