彼の溺愛はわかりづらい。



しぃ、ニヤニヤすんな。

今すごくお面被ってほしいよ、しぃ。


…とりあえず、これ以上聞いても何も教えてもらえないということはわかったから、不服極まりないけどスルーすることにした。



「……で、しぃ、そこの失礼極まりない人、誰?」

「海堂燈。けっこーモテるらしいよ」

「なんで、なんであんな奴がモテんの?私さっき、ものすごくぶん殴りたくなったんだけど」

「そら、キミは二次元専門だからでしょ。あーゆーの、モテるよ~?だって顔いいし」

「世の中結局は顔か」

「顔だよ」



しぃの闇を垣間見たところで、私はヤツのいる方向から視線を逸らした。


よし、決めた。

こうなったら、とことんよろしくしない方向でいこう。


そしたら、お互い嫌な思いしなくて済むしね!


そう思い、私は渋々もう一度、ヤツの方へ向く。



「海堂」

「…なんだよ」

「やっぱさっきの取り消しで。私とあんたはこれから、とことんよろしくしない方向でよろしく」

「……は?」

「じゃ、そーゆーことで」



言いたいことをさっさと言って私はそっぽを向き、ソッコー鞄からイヤホンを取り出して、最近ハマっているバンドの曲を流した。
(しぃはいつの間にかいなくなっていた)


あぁ、さっきからのイライラも忘れられる…!

ギターの音の裏から聞こえてくるドラムの「ダンダン」という音で、イライラがぶちのめされているように感じる。超快感。