彼の溺愛はわかりづらい。



まぁでも、あいさつしておいて損はないか、多分。
(何よりしぃがうるさいし)



「あの、これから隣の席だよね?私、渋川琴。よろしくね」

「…………は?」

「は?」



隣の席のヤツは、私がにこやかにあいさつしたにもかかわらず、第一声が「…………は?」とか、ふざけてんのかと思った。



「隣?お前が?最悪なんだけど」

「はぁ~?」



次に発した言葉が「最悪」とかきたもんだ。

…最悪なのはこっちだ。なんで出会って早々、暴言吐かれなきゃなんないんだ。



「どうせなら志波の方がよかった」

「…噓ついてんじゃないよ、海堂。せっかく人が気ぃ利かせたのに」



ちょ、待って。

え、しぃ、知り合いだったの???


ワケわかんないんだけど、一つだけ言っていいかな?


そこのヤツら、二人とも殴らせろ。とりあえず。


いや、海堂…?(早々に呼び捨て決定)はよくわかんないけど、しぃのこと殴ったりしたら、物理的にも精神的にも痛めつけられるだろうからやらないけど。



「…しぃ、まさか知り合いだったの?」

「そうだけど?中学のときの同級生」

「なんでさっき、あんなに知らない風に騒いでたの?」

「さ~あ?なんででしょう~?」

「わかんないから聞いてるんだよ、しぃ」