彼の溺愛はわかりづらい。



…それに。
別れるときの、彼女の言葉がまた蘇る。

「頑張ってね」
単純な言葉で、何気なく言ったのかもしれない。社交辞令なのかもしれない。

それでも俺には、憂鬱が吹き飛ぶくらいの効果はあった。


…あーあ、名前、ちゃんと聞いとけばよかったな。









「うわ、また点決めてる!」

「海堂先輩、今日なんか調子いいですね!」

「いや、今日の燈はいつも以上だろ。なんかあったんだろうな」



ただひたすら、走って、パスして、打って。
他のことを考えてる余裕なんてなかった。ただ必死に、今の俺の最高の力を出し切ることだけ考えてた。

一心不乱……そんな言葉が、ピッタリなんだと思う。


試合終了の笛が鳴ったとき、一気に力が抜けたような感覚がして立つことすら難しかったけど、なんとか立ちながら得点ボードを見てみると、俺たちのチームが圧勝していた。



「…燈、お前、点取り過ぎだぞ」

「は?」

「これの半分はお前の点数だもんな」

「え、マジ?」