彼の溺愛はわかりづらい。



羽澄にはそう言ったけど、まさに羽澄の言った通りで。
図星だったから余計に「マジで黙れ」って思ったんだけど。



「つーか、試合だから。失せろ羽澄」

「試合やる気なくて、そのまま行かなそうな勢いだったのに?頑張れとでも言われた?」

「…黙れっつったよな?もう行く」

「燈、頑張れよ」



羽澄が去り際にそう言ってきたから、返事をする気にもならなかった俺は、軽く片手を上げただけだった。









「あ、海堂先輩!遅かったですね!」

「ごめん」

「いや、間に合ってるんですし、謝らないでくださいよ」

「そうか?じゃあ今の取り消しで」

「先輩…」



俺が言うと、なぜか皆、苦笑しただけだった。

何がおかしいのかわからないまま、とりあえず着替えようと思い、一言声をかけてから更衣室に向かった。


更衣室に着いて早速ユニフォームに着替える。

…これを着るのも、これがきっと最後なんだな。
そう思うと、少しだけ変な気持ちが湧いてくる。3年間着てたんだ、やっぱり何とも思わない方が無理だ。