彼の溺愛はわかりづらい。



「頑張ってね」
それだけで、ゼロどころかマイナスだったやる気が、一気に最高レベルまで達した。



「じゃあ、またね」

「またな」



彼女は公園に入って行き、俺は来た道を戻る。
一応、時間に余裕を持って家を出たから、まだ試合までには充分間に合うはずだ。

けど、急がないといけない。
そのはずなのに、少し進むごとに振り向いてしまって、またアイツを見る。

…結局、アイツが公園からいなくなるまで、ずっとチラ見をしていた。



「やっべぇ…」



念のため持ってきた腕時計を見ると、既に集合時間の五分前。
俺はそれから、全力疾走した。


するとそこには。



「青春ですな~」



ニヤニヤしている……羽澄。ウザい。



「うっせ黙れぶっ飛ばす」

「…燈、好きな子にはそんなこと言ったら嫌われるよ?さっきの子とか」

「はぁ?」

「燈、わかりやすいよ?あの子は何も気づいてなかったっぽいけど」

「…そんなんじゃねぇから」