彼の溺愛はわかりづらい。



「ほーら、ちゃんと見ときなよ。超イケメンだから!」

「へぇー」

「琴。あからさまに興味なさそうにしないでくれる?」

「仕方ないじゃん。だって興味ないんだし」



…あ、しまった。


しぃは少し怒ってるし(少しだけどとても恐ろしい)、その〝隣の席の人〟も聞いてたっぽいし。


…っていうか、本当にイケメンだ。
あのしぃが騒ぐだけある。

まぁ、しぃは他校に彼氏いるらしいけど。
告げ口してやりたい。他の男に熱を上げてましたよー、と。



「で、琴、見た?」

「あ、うん。今見た。確かにイケメンさんだね」

「だよねぇ。ね、琴、狙っちゃいなよ!」

「ムリ。パス。ビジュアル的には興味あるし、観察対象としてはいい物件だけど、実際に付き合うとかそういうのは無理だから」



「えぇ~」とつまらなそうにするしぃ。

…それなら、君が彼氏と別れて、そこのソイツに乗り換えればいいんじゃないですかね。
…って、電車とか携帯電話みたいにあっさりと乗り換えるのも、それはそれでどうかと思うけど。



「とりあえず、あいさつぐらいはしとけば~?隣の席なんだし」

「んー」



正直に言うぞ。めんどい。

そもそも隣の席の人の名前も知らんし。