悪魔の花嫁

礼子は相変わらず口が悪いが、お昼はいつも一緒である。
「婚約指輪よね、それ。」
 露子の指先を見た礼子は驚きを隠せない様子であわあわとしている。
「礼子さん、あなたも会ったじゃない。お日様ローンの社長さん。十全さんっていうの。私の事が好きなんですって。」
 露子は笑いながら左手をヒラヒラと動かす。
 指に嵌ったピンクゴールドは露子の白い肌に似合って煌めいている。
「あなた、それ大丈夫なの?ヤクザの親分の姐さんになるっていうの?それとも彼を弄んでお金をむしり取る算段なの?露子さん、危ないことはよしてちょうだい。」
 礼子は、なにかのテレビドラマの影響なのか、妙な事を言出す。
 露子はこの礼子がなんだか、好きになってしまった。
 素直で良い娘だ。
「十全さんはヤクザの親分なんかじゃないわ。そうね、悪魔、かしら。それに、私も十全さんもラブラブなんだから。礼子さんも結婚式には招待するわ。だって、大切なお友達だものね。」
 露子はカラカラと笑う。
 礼子は呆然として此方を見ている。
「露子さん、私あなたが何者でももう驚かないって思っていたけれど、撤回するわ。
あなたって、一体何?」

「私、悪魔の花嫁になるの。」

 露子は婉然と笑う。
 それは、見るもの全てを虜にするような美しい笑みである。
 
 

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 所は変わって十全のお日様ローン、事務所。
「十全さん、私あなたの奥さんになるんだから、私も悪魔にしてしまえばいいと思うの。」
 露子は仁王立ちである。
「露子ちゃん、意味を分かって言っているのかな?」
 十全は飽きれたように言う。
「悪魔っていうのはなろうと思ってなる訳じゃなくて、」
「じゃあ、どうやって悪魔になればいいの?」
「そうだね、人間の魂を集めて心をすり減らしてしまえば悪魔になる。だけど、僕は露子ちゃんにはそのままでいて欲しいよ。それに、君はそのままで悪魔じみてる。」r
「まあ、酷いわ。」
 露子は可愛らしく頬を膨らます。
「まあ、方法が無い訳じゃないけどね、君はまだ少女だ。もう少し大人になるまで僕は待つことにする。」
「ふうん。」
露子は納得したような顔で、「まあ、いいわ。」と。
「でも、あんまり、私を放っておくと浮気しちゃうんだから!十全さん。」
 露子は可愛い。
「露子ちゃん、酷いよ。」
 十全はもう既に頭が上がらないのだ。
 すると、キイとドアを開けて、従業員の村上が入ってくる。
「社長、この案件なんですけど、あ、露子さんだ!ども!」
村上は明るい様子で露子に挨拶する。
「うふふ。私十全さんの奥さんになるの。だから、奥さんって呼んでいいの。」