私の名前は 佐利美 花菜(さとみ はな)。

誘拐されてから5年が経った。


当時の私は小学5年生で今は15歳。

お母さんと二人で暮らしてた。

お父さんはいない。

前に学校で友達に「なんで、はなちゃんのお父さんはいないの?」聞かれてお母さんに聞いたら「ごめんね」って言われた。

私は怒っているわけでもないのになんで謝ったんだろう。


………………………………………………お母さん





ぎゅっと目をつぶった。

涙がでそうだった。

……会いたいよ




「おはよう」


「!……………おはようございます…」


あいつが来た。


「………………………ここにご飯置いておくからね」


「……………はい。」


あいつ(誘拐犯)は朝8時に私のところに来て3食分の食べ物を置いていく。



最初は手をつけなかった。


毒が入っているんじゃないか?

太らせて私を食べるのかも?


そんなことばっかり考えていた。


けれどお腹は空いてくる。



3日間、なにも食べず過ごしていたけど空腹に耐えきれず食べてしまった。


実際毒は入っていなかったし、太らせて食べるなんて馬鹿げたこともしないだろう。



私はベッドから降りて食事を取りに行った。

コンビニ弁当ではないんだろうけど………かなり美味しい。


「……どれ食べよう…」

パスタにカツ丼、パンとオムライスがある。



「……………パスタにしよう」


お母さんと二人で暮らしているときはこんな物食べたことなかった。


お母さんずっと働いていた。

朝も夜もずっと。



だから帰ってくるのが朝の3時。私は寝ているから会えない事がいつもだった。


たまに学校から帰ってきたらお母さんと会うときはあった。


お母さんは私を見たら
「あら花菜!おかえりなさい!」
って言ってぎゅっと抱き締めてくれた。


「ただいま!」

お母さんのいい臭いがする。


「…ご飯作っておいたからレンジでチンして食べてね。……じゃぁいってきます!」


「行ってらっしゃい!」

私は精一杯の笑顔で送った。


本当はもっとずっと一緒にいてほしかった。


学校に迎えに来てくれてる友達のお母さんが羨ましくて仕方なかった。


けど違うお母さんが欲しいだなんて思ったことはない。


私のお母さんはただ一人。

大好きなお母さん。



会いたいよ。



パスタを食べ終わる。

お母さんのご飯食べたいな…


私はまたベットに戻って横たわった。



ここは私が住んでいた家よりずっと広い。

お風呂もキレイだし、トイレも広い。冷蔵庫もあるし、使ったことないけどキッチンだってある。



たぶん…………私とお母さんでは絶対に住めない家。



それでも…………………………………




『ねぇーお母さん!』

『なに花菜?』


『今日ねー、学校でね自分の宝物はなんですか?って先生がみんなに聞いたんだよ!』

『みんなはなんて言ってたの?』

『えっとね…マナちゃんがチョウチョのネックレスでね、ハルキ君がゲームだって!』

『花菜はなんて言ったの?』

『私はね、これ!』

私は手に持っていたウサギのぬいぐるみを前につき出した。

『ミミちゃんが私の宝物なの!!』

『ふふっ。そうだね、いっつも一緒に寝てるもんね!』

『うん!………………お母さんの宝物はなに?』

『お母さん?お母さんはね……花菜かな』

『え?私?』

『うん!お母さんの大事な大事な宝物。絶対に無くしたくないの。花菜がいてくれたらお母さん何でもできるんだよ!』


『……私、ミミちゃんも宝物だけどお母さんも大事だから!』

『ふふっ。ありがとう』






「…………おはよう」


はっと目を覚ました。


いつの間にか寝ていたのだ。


今何時…………

「………嘘…8時?」

なんでそんなに寝てたんだろう……………

でも、お母さんの夢見てたな…。


懐かしい。

お母さんの宝物は私で私の宝物はお母さん。



「………ここにご飯置いておくからね…」

あいつは食事を置いてまたこの部屋から出ていこうとした。


いつもあいつは鍵を開けてここに来る。


そして食事を置いたら出ていって鍵を閉める。



「………………………………あの!!」

私はあいつの背中に向かって叫んだ。


「…どうしたの?」

あいつは振り向く。


「……お、お母さんに会いたいです!…会わしてください!」


「…お母さんに会いたいの?」



「会いたいです!!」

「………………なんで?」



「え?…」

なんで?…なんでって…………………

「…お母さんが好きだから!大好きだから!だから………」

涙が落ちた。

今までおさえてきた気持ちが一気に溢れでてきた。


「お母さんが好きなの。……もう5年も会ってない。元気かな?私がいなくて泣いてないかな………」


「…お母さんのこと好きなんだ……」

あいつは私の肩に手を置いた。

「…ごめんね。悪いけどお母さんには会わせられない」


「……どうして…」


「……………ごめんね…」


あいつはそう言うと、この部屋から出ていった。



そして次の日から、今までずっと同じだった5年間の生活が変わった。


あいつは………朝8時に来て、3食分の食事を持ってきた。


そして、その後にすごい大きいダンボール箱を持ってきた。