私たちが店に戻って来た時は既に営業が終わっていた。

 フロアでは戸村先輩が芝刈り機みたいな大きな掃除機で床にかけている最中だった。
 シャンデリアの明かりは落とされて、全てのテーブルからクロスが剥がされている。

 田代先輩と黒田先輩たちはそれぞれグラスや皿類を磨いたり、テーブルや椅子を拭き掃除したり、レジカウンターのパソコンを操作したりしている。

 私は一息する間もなく裕太と手分けして作業に加わった。
 私はメニュー表の束を持って厨房へと向かって行く。

 宮岸さんは奥寺先輩に案内されて店の面談室に入ると、そこで待機していたオーナーやチーフシェフから礼を受けた。

「ありがとうございます。せっかく楽しくお食事をされていたところをお手数かけてしまいましたね」とオーナー。

「いえ、別に大した事ではないですよ」

「お礼をしたいのですが」とオーナーは言うけど、宮岸さんは遠慮した。