戸惑う裕太を横目に宮岸さんが10番テーブル席に行った。

 事前に用意していた1万円札が10枚入っているのを確認した奥寺先輩は封筒ごとテーブルに置いて差し出した。

「十万円でしたねー?」

 すかさず宮岸さんが声をかける。

「払う必要ねーぞマーリィ! ゼニはしまっとけー! バカ女に差し上げる必要はねー!」

「え?」と奥寺先輩は宮岸さんに目をやる。

 宮岸さんはスポーツ刈り男の手首をグィッとつかみ上げた。
 更に背後に回り、つかんだ手首を腕ごと回して強く握りしめて強引にひねった一連の動きは見事な早業である。

「イテテテテーッ!」

 あまりにも痛さにスポーツ刈り男は苦しい声を上げた。
 抵抗しようにも宮岸さんの腕力が強くて動けない。