3番テーブルから空の食器を引いて来て洗い場のカウンターに置いている奥寺先輩の所にチーフがやって来てソッと質問する。

「宮岸くんは、どこかの一流レストランで腕を振るっているのかな?」

 おやっと言う顔をした奥寺先輩は聞き返す。

「あれー? オーナーから聞きませんでしたか? 彼は和食専門の料理人だって事を」

「何だ? 彼は板前なのか?」

「はい」

「でもイタリアンも作れるじゃないかー? ウチのメインを全て、完璧に作りこなしているぞ」

「どんな料理でも作れちゃう、オールマィティな板前さんかもしれません」

 一通り作業を終えたチーフは手を休め宮岸さんの様子を見入った。