「イイの? 帰るのを伸ばしたりして、旅館の仕事に影響するんじゃなーい?」

「その点は心配ねー。来週になると予約客がいっぱいになるけど、今週は余裕が有るからよ」

「そっか」

 今は忙しくないと聞いて奥寺先輩は安堵した。

 他の場所で厨房に立つなんて、宮岸さんとしては2回目である。

 最初は地元華乃鷺温泉の秋好旅館だった。
 臨時だけど、一流料理人に混じって板場に立って腕を振るっていたのだ。

 そして今度は『タリスガーデン』の厨房である。
 普段は馴染みのないイタリアンだから、調理の補助レベルの仕事をするのだろうと奥寺先輩は思った。

 ところがどう!