「難波さーん!歩くの速いですよ。」

傘をさし、浅い水溜まりを小走りで難波さんについて行く俺。

「そうか?普通だぞ。青山くんが遅いんだ。」

「バイクもあるのになんで徒歩なんですか?」

ようやく難波さんに並んだ俺はなんとか足並みを揃えようと必死だ。

「問題だ。被害者の持ち物にある物がなかった。
それは何でしょう?」

突然、問題をふっかけてきた難波さん。
少し戸惑ったが、冷静に俺は推理してみた。

前日の雨の具合、免許証での身元確認。
被害者の自宅から殺害現場までの距離はそれ程離れていない…。

「…もしかして、車の鍵ですか?」

「正解だ。やれば出来るぢゃないか。」

難波さんの細い目がニヤリと笑った。

「現場に落ちていた壊れた傘。
被害者は免許証を持っていたにも関わらず、
車のキーは見当たらなかった。
徒歩で行動していたと考えるのが自然だ。」

「そうですね…。」

「それにもし、バイクで行動したら
事件に関わる匂いを嗅ぎ逃す可能性もあるだろ。」

難波さんはそう言いながら眉をピクリと動かした。

「あそこに1件、ファミレスがある。
開店は10時のようだ。それまで家宅捜査!
青山!ついてこい!」

「えっ!?走るんですかー?!」

難波さんが走り出した。しかも比嘉特捜部長と同じように俺を"犬っころ"なんて呼ぶ。
からかわれてる気もするが、学生時代バスケをやっていた俺は負けじと走った。