「何故、毒物検査を…?」

まさかの俺の言葉に、
比嘉特捜部長が俺をギロリと睨んだ。
あー怖い!難波さんもハラハラしている。
これは、説得力ある事を言わなければ1発殴られてしまいそうな勢いだ。

「えっと、それはですね…ここに入ってきた時
いつものように視えたからで…」

威圧感に圧倒されて説明するが、
そもそもあぁ思った理由は俺の"ある能力"のせいだ。説得力とは無縁過ぎて上手く説明しにくい。

「そうか…青山、何を視たんだ?」

焦ったが、比嘉特捜部長は俺の能力をかってくれた張本人だ。信頼されてるようで安心した。
難波さんは初対面だし知らない為、チラチラと俺と特捜部長を交互に見て状況を知りたがっている。

「俺が公園に入った時、コーヒーの匂いがしたんですよ。」

「コーヒー?」

難波さんが怪訝な目で俺に問う。

「はい。ハーブが混ざったような独特なコーヒーの匂い。それから、植物の匂いに混ざった血の匂い。
それを感じた時、毒による目眩の感覚。」

俺が感じたままに2人に伝えると、
比嘉特捜部長は顎に手を当てて考えている。

「…1度調べる価値はあるな。」

そう言って、近くにいた鑑識さんに報告した。

「え?!比嘉特捜部長?!
俺には、さっぱりなんですが…」

難波さんが報告を遮るように訴えた。

「難波、お前がそう思うのも無理ないが、
こやつの能力は認めざるを得ない位のものだ。」

「うーん。なぁ、青山くん?」

難波さんの視線の矛先が俺に変わった。

「君の能力がまず、どうゆう物なのか
ちゃんと説明してもらおうか。」


「……難波さん、ちょっと待って下さい。」

ツン……。

また、匂いがした…。

なんだろう?

俺は目を閉じて、感覚を研ぎ澄ます…。

冷たい風が公園内を吹き抜けて、
辺りの空気が洗練されていく…。

「難波…よく見ておけ。」
「特捜部長、いま、彼はもしや…」

「あぁ。特性を使っている…」

比嘉特捜部長と難波さんは、俺の姿を見守っている。

これは……

「女の人の、涙の匂い…」

目を開けて、そう呟いた。