「夕方、犯行前で緊張していた俺は
あの店の前をたまたま通ったんだ…」


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一度止んでいた雨は再びしとしとと、一定のリズムを刻んで美作の身体を濡らしていく…。

""お疲れ様です!コーヒーはいかがですか?""

""あ、いや…そんな気分では…""

""……ぢゃあ、お試しでどうぞ。
顔色悪いですよ?身体も温まります!""

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「犯行前の人間とも知らずに、
無条件で優しくしてくれたあの笑顔に
ホッとさせられてしまった…。」

俺はその話を聞いて、すぐにゆめちゃんの事だと理解った。

「明部を刺した後、とてつもなく虚しくなった。
荒れた自分の息から、ハーブが薫ってきて…
彼女の優しさも無下にした。自己嫌悪さ。」

そう言うと美作あきらは、
俺と烏丸を交互に見た。

「俺はずっと孤独だった。
あんた達みたいに特性をいい方向に
生かしてる奴らが羨ましいよ…。」

苦笑いを浮かべた後、「話す事は以上」とゆうような仕草をして、事情聴取は終わった…。

さっきの美作あきらの言葉は、
心からの言葉だと感じた。

"自分の特性に悩む"とゆう事は、
特性持ちには絶対と言えるくらい付き物だ。

部屋を出る前に俺は、
特性持ちとして一言だけ零した。

「…特性が開花したのは、必ず意味があるんだ。

だから、あんたにもきっと、
"いい方向"にする物もあるはずです…」

零れた言葉を拾った美作は、

「刑事にしては、優しいな。」

そう言って、不器用に笑った。