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「はぁっはぁっ!…くっ…そぉ…」

夕陽がもう、沈みそうな頃…。
街中の路地裏に逃げ込んだ1人の女性がいた…。

彼女は悔しそうな表情をしながら、
手首に包帯をぐるぐると巻いた。

「日芽……どうか、無事でいてくれ。」

ショートカットの黒髪。
長い前髪の奥の瞳は、
柊木日芽と瓜二つ…。

沈みゆく夕陽を眺めながら、
強くそう願っていた…。


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柊木日芽に懇願された俺だったが、
結局現場に行っても、柊木日芽の家にも
憂莉さんの痕跡を見つけることは出来なかった。


必死に特性を使ってなんとかしようとしたが、さすがに疲れが出てきてしまい、難波さんが止める形で今日の捜査は終わった。


家に帰ると、レナさんの手料理のいい匂いが漂ってきて、ほっと癒された。

「ただいま。レナさん」

「おかえりなさい!遥斗!」

鍋の火を小さくして俺に飛びついてきた。

ぎゅっと抱きしめると、
家庭的な匂いと、彼女の温かい体温に
更に癒される。

「いつもより疲れてるみたいね。」

「うん。一緒に捜査してた人が
なかなかスポ根でね。ずっと走ってた。」

労いの言葉を貰い、夕飯の支度を
終わらせて食卓についた。

テレビをつけると、今日の事件のニュースが流れていた…が、レナさんが気を利かせてチャンネルを変えてくれた。

「…ニュース見たから、いいや。
あっ!動物ものやってるー!」

「可愛いね。レナさんみたい。」

さすがに帰ってきてからも事件の事を考えるのは疲れる。レナさんはいつもそうゆうのを言わなくても何となく察してくれる。
さすが年上だ…と関心してじっと見つめていると、
肉じゃがをあーんとしてくれた。

条件反射でぱくっと食べると、
レナさんは満足そうに微笑んだ。

「ねぇ、レナさんはさ、
テレパシーとか信じる?」

俺がそう言うと、レナさんはきょとんとしたがまさかの回答がきた。

「あたし、遥斗から結構、
感じてるよ?」

えっ!?と驚いたのは俺の方だった。

「なんで?俺、送ってるつもりもないのに。」

レナさんは霊感持ちだ。
視る事があってもあまり口にはしないが、
そうゆうのもあるのかと聞いたがどうやらそこは関係ないようで…。

「ふとした時にね、遥斗に何かあったなとか、
直感的に思ったり、想いが飛んでくるって
ゆうのかな…。」

そう言いながらレナさんは俺の手を握った。

「繋がってる証拠なんだよ…。」

綺麗なネイルが施されたその手は、
本当に温かくて愛おしかった…。

「繋がってる証拠…か。
ありがとう、いい答えを聞けたよ。」

そう言うと、俺の手にそのままチュッと
キスをして、ご馳走様と後片付けを始めた。

「後片付け、俺がしようか?」

「ううん、やるよ!遥斗はぢゃあ
お風呂沸かしてくれるかしら?」

「はーい!!」

元気に返事をして、風呂場に行き湯を沸かす。

"繋がってる証拠"

柊木日芽と、憂莉は双子であり、
そうだからテレパシーを感じやすいのだろう。

憂莉さんに何があったのかは
分からないままなのが日芽さんには申し訳ないが、今は明日の捜査の為にしっかり疲れを取ろう。