夏海は次の朝一番のフェリーで、稚内に渡った。
病院に着くと、颯太はまだICUに入っていた。
酸素マスクをしたまま、苦しそうな顔をしている颯太…。
私のせいだわ…。いつも颯ちゃんに、苦しい思いをさせて。私は…颯ちゃんを愛する資格なんてないわ。
その日の夜には、颯太の兄が稚内に着くと、看護士が伝えた。
夏海は颯太の顔を見つめて、名前を呼んだ。
「颯ちゃん、颯ちゃん、目を覚まして…お願い…。」
後は、声にならない。ただ、涙だけが、頬を伝って流れて落ちて行く。
夏海はずっと颯太の側に、寄り添っていたかった。
でも、時間は無情に過ぎて行く。
午後のフェリーで、帰らなければならない。
夏美は、聡に連絡した。
聡が、心配そうに聞いた。
「母さん、あいつは…颯太は?」
「まだ、わからないの。意識は戻らないの。颯ちゃんのお兄さんが夕方、稚内に着くって看護士さんが言ってたわ。」
「母さん、いてあげたら。こっちはいいから、あいつの側にいてあげたら?母さんに、会いたかったんだから。」
「聡…、ありがとう。」
「母さん、泣くなよ…ね。父さんが死んでから、ずっと頑張って俺達を守ってくれたんだ。もう、好きに生きても、いいんだよ。」
聡も、涙ぐんでいた。
夏海は、颯太の側で、ずっと颯太の手を握った。
夕方、颯太の兄が病院へ着いた。
夏美は、病院の待合室で顔を合わせた。
「森山颯太の兄です。ご迷惑をおかけして…。」
「いいえ…あの…。」
「颯太は?」
「まだ、意識が戻らないんです。」
颯太の兄は、ICUへ入って行った。
暫くして、戻ってくると夏海に言った。
「栗林さん…ですよね?匠君から訊いています。ジラソーレにいらしたそうで、そちらもお世話になりました。私の友人ですが、申し訳ない事をしたと言っておりました。礼文で、民宿をしていると聞きました。颯太はそちらへ行く途中で、事故を起こしたんですね。忙しい時に付き添って頂いて、すみません。もう私がきましたので、お引き取り下さい。」
夏海は颯太の兄の言葉に、返事が出来なかった。
病院に着くと、颯太はまだICUに入っていた。
酸素マスクをしたまま、苦しそうな顔をしている颯太…。
私のせいだわ…。いつも颯ちゃんに、苦しい思いをさせて。私は…颯ちゃんを愛する資格なんてないわ。
その日の夜には、颯太の兄が稚内に着くと、看護士が伝えた。
夏海は颯太の顔を見つめて、名前を呼んだ。
「颯ちゃん、颯ちゃん、目を覚まして…お願い…。」
後は、声にならない。ただ、涙だけが、頬を伝って流れて落ちて行く。
夏海はずっと颯太の側に、寄り添っていたかった。
でも、時間は無情に過ぎて行く。
午後のフェリーで、帰らなければならない。
夏美は、聡に連絡した。
聡が、心配そうに聞いた。
「母さん、あいつは…颯太は?」
「まだ、わからないの。意識は戻らないの。颯ちゃんのお兄さんが夕方、稚内に着くって看護士さんが言ってたわ。」
「母さん、いてあげたら。こっちはいいから、あいつの側にいてあげたら?母さんに、会いたかったんだから。」
「聡…、ありがとう。」
「母さん、泣くなよ…ね。父さんが死んでから、ずっと頑張って俺達を守ってくれたんだ。もう、好きに生きても、いいんだよ。」
聡も、涙ぐんでいた。
夏海は、颯太の側で、ずっと颯太の手を握った。
夕方、颯太の兄が病院へ着いた。
夏美は、病院の待合室で顔を合わせた。
「森山颯太の兄です。ご迷惑をおかけして…。」
「いいえ…あの…。」
「颯太は?」
「まだ、意識が戻らないんです。」
颯太の兄は、ICUへ入って行った。
暫くして、戻ってくると夏海に言った。
「栗林さん…ですよね?匠君から訊いています。ジラソーレにいらしたそうで、そちらもお世話になりました。私の友人ですが、申し訳ない事をしたと言っておりました。礼文で、民宿をしていると聞きました。颯太はそちらへ行く途中で、事故を起こしたんですね。忙しい時に付き添って頂いて、すみません。もう私がきましたので、お引き取り下さい。」
夏海は颯太の兄の言葉に、返事が出来なかった。


