朝になっても、雨は上らない。
夏海は、心配になった。

昼過ぎても、颯太から連絡はなかった。

仕事が一段落して夏海は、メールしてみた。待っていたが、返事は来なかった。電話もつながらない。


何か…あったかもしれない。不安が心をよぎる…。でも、違うかもしれない。
もしかしたら、夏海を驚かせようと、民宿にひょっこり顔を出すかもしれない。

そう思いながら、夕方になった。


夏海は、何度となくメールも電話もしてみたが、繋がらなかった。

民宿の夕食事時は、忙しい。夏海は心配しながらも、颯太に連絡する時間はなかった。

宿泊客は、夕食時に食堂に集まる。夏海は、夕食の準備に追われた。

テレビで、夕方のニュースが流れている。
道北街道は今日の雨で、路面が濡れて滑りやすいので気をつけるようにと、アナウンサーが言った。夏美は、嫌な予感がした。
次のニュースで、バイクが転倒事故を起こしたと言っていた。
乗っていたのは、免許証から玉山市の森山颯太さん。稚内の病院に収容され、意識不明の重体であると言った。夏海は、驚いた。


「颯太…」


夏海は、その場に立ち尽くした。


その夜、稚内の病院に電話をした。まだ、ICUに入っていて意識はないと、言う事だった。
聡も心配して、夏海に声をかけた。

「母さん、容体はわからないの?俺、匠に連絡してみる。」


「そうね、匠に連絡して…。ご家族が心配しているから…。」


夏海は胸が詰まって、もうそれ以上何も言えなかった。


「母さん、匠の奴びっくりして、家のほうへ知らせに行くって。」


「颯ちゃん、大丈夫かしら…。」


「母さん、民宿のほうは良いから、明日稚内までいったら?」


「でも、私がいなくちゃ…」


「大丈夫さ、夕食までに帰ってくれば、後は俺がやる。母さんが行ってやらなきゃ、あいつ可哀相だろ。颯太は、母さんに会いに来たんだから。」


聡の言葉に、夏海はただ頷くのがやっとだった。