いつもの朝がきた。

「あなた、時間よ起きて」


夏海は、いつものように康介を起こし、それから、夕べ遅かった聡と匠を起こしに行く。

「匠、昨日は何時に帰ったの?お母さん、わからなかったわ。何してるんだか、あまり感心しないわね」

「うるさいな、夕べ遅かったのはバイトだよ。それよりさ、もういい歳なんだから、わざわざ起こしにこなくてもいいよ」

匠は、眠い目を擦りながら言った。

「そうは行かないわよ、親に養ってもらってるんだから。とにかく、単位落とさないでね。ご飯よ!」


まったく、一人で大きくなったような顔して…。


今朝は珍しく、家族4人そろっての朝食だった。


「今日は、朝イチから講義あるんだ」


寝癖のついた頭を掻きながら、聡が起きてきた。


「俺もさ」


大あくびしながら、匠も席についた。


「お前達、バイトもほどほどにしろよ。勉強がおろそかになったら、大学へ行った意味がないからな」


そう言いながら、康介はお茶をすすった。
聡と匠は、顔を見合わせて笑った。

「わかってるよ父さん。僕達は父さんが思う程、酷くないよ。信用してよ」


聡が言うと、康介は安心したように笑い、会社へ出かけて行った。


「さあ、俺達も行かなきゃ」

聡が靴を履くと、匠も並んだ。


「二人共、気をつけるのよ。いってらっしゃい」


「あ、匠、バイクだろ?俺のバイク、修理終わるの今週末だからさ、それまで、乗せろよ匠?」


聡は、匠の肩を叩いた。


「しょうがないなー、飯だぜ」


「ああ、わかった、わかった」

「ほら、後に乗れよ」


聡が、匠のバイクの後に乗ると、バイクは白い煙を残して、みるみる小さくなっていった。

おかしな会話ね。
バイクに乗せるから、昼飯おごれって事ね…。

夏海は、小さくなった煙を見つめながら笑った。