そして…

その講義が終わった後…、身支度を整え…教室を後にしようとする瑞希に…

「ねぇ、瑞希ちゃんの好きな人って、三枝講師っ? 40代でオジサンだけど、独身だよね?」

その、突飛な発想に…、さすがの瑞希も呆れながら…

「っえ? ちがっ! 瑠樺ちゃん、あのね…」

「いゃ! あの熱い眼差し! 間違いない! いぃよ、恋愛に年の差なんて…いくつ違うのかな? 20ウン歳だけど…、知らなかった…瑞希ちゃんがオジサン好きだとはっ!
確かに、あの講師、年は取ってるけど…イケメンだよ。それは認める!」

そのぶっ飛んだ発想に、慌てた瑞希は…

「ちょっ! 違うから…っ! 話を…」

「そうね、オオヤケには出来ないよね? 親子くらい年が違うのか…。
うん、分かった…内緒にしとく…っ!」

話が飛びすぎて…、収集がつかなくなりつつある瑠樺…、瑞希は、その瑠樺の腕を掴み…

「瑠樺ちゃん、落ち着いて! 違うから…あの人はっ!」

その時、壇上にいたはずの男性が、瑞希たちのいる席まで近づいてきていた…

「瑞希!」

その、耳元に届いた声に…2人は、その声がした方を振り返る…

「まさか、私の授業を取ってくれてるとは…」

そぅ、笑顔でそう言った男性に…、瑞希もつられて笑顔になる…

「お久しぶりです。…お父さん…」

その、瑞希の口から出た言葉に…、瑠樺は空いた口が塞がらなかった…

「っえ? 【お父さん】?!」

驚きを隠せない瑠樺に…、瑞希は、瑠樺の方に視線を送り…、頷き返した…

「…うん。だから、話を聞いて…って…」

「瑞希の友達か。今後とも、よろしくね」

そぅ、笑顔を向け…立ち去って行った瑞希の父・三枝 恭一に、瑠樺は、一瞬にして頬を赤らめ…

「ねぇ、あたし…また勘違い?」

「そうね…。ウチ、両親が10年前に離婚してて…、父はこっちで講師やってるから…。言わなきゃ分からないはずよね?」

と、勘違いをさせた自分にも非がある…と、言いたげな瑞希…

瑠樺は、漫画の笑顔で、瑞希の方に振り向くと…

「三枝講師って、オトナの魅力がダダ漏れしてる! ちょっと年は上だけど…かっこいいよね?」

その、瑠樺の言葉に、瑞希は目をパチクリさせる…

「…え? 瑠樺ちゃん?」

「かっこいい…! 決めた、あたし、この授業、真面目に受ける!
で、一生徒ではなくデートして貰う!」

その突飛な発想に…、瑞希は頭を抱え…

「瑠樺ちゃん…、何でそうなるの?」


✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


「でー! その、講師の先生ってのが、実は瑞希ちゃんのお父さんだったんだけど…、これがまたイケメンだったのー!」

と、学食に着くなり…、オムライスを頬張りながら…瑞希の父・三枝 恭一について語りだしている瑠樺…

瑠樺に、口止め…しようにも…無駄なことだと瑞希も分かっていた…が。。

午前の講義終了…と、ともに学食に来ていた雅人や悠にまで開口一番にその話題に触れるとは、思いもよらなかった…

「…そうだったんだ…。じゃ、随分大変だったんだよね? 10年前にって、鷺森さん、小学生でしょ? 寂しい思い、してきたんだ…」

と、瑞希の両親が離婚し、幼い瑞希が味わってきたことを察するような言い方をした悠…

【苦労したね】…と、言う人は、割と居る…。。でも、【寂しい思い】と、言う表現をする人は、余りいなかった…

その悠の言葉に、何故、分かるのか?…と、思えてならなかった…

「あ、ウチは、母が看護師だし。祖母も一緒に住んでるから…
確かに、お父さんと一緒に居れなくなって寂しくはなったけど…お休みの時は、遊びに行けたから…」

「そっか…」

その、穏やかな優しく柔らかな笑顔を向ける悠…。。瑞希は、勘違いをしてしまいそうな心地だった…


自分だけの特別な…微笑み…