いつも、1人だった。
本当は1人じゃないの。
でも、そう言われた。

「ねぇ、なんで本ばっかり読んでるの?」

答えたくなかった。
答えたら私だけのものじゃなくなる気がして。

「ねぇ、その本見せてよ」

「…いや…だ」

「なんで?」

その瞬間、本は私の手から離された。

「ちょっと!取らないで!」

「みてみて!王子様がいる!」

「返して!返して!」
「やめて…おねがい…返してよ…」

返して、私の王子様。

私だけをみてくれる王子様。

「返しなよ」

「陽くん」

「花純嫌がってるじゃん、返して」

「ごめんなさい」

陽くん、ありがとう。というセリフも言えないまま、私はその場から逃げた。

王子様とはやく二人きりになりたかった。