誰だっけ?そんな疑問が頭から離れない。しかし少ししてやっと思い当たる人物が脳裏に浮かんだ。
「中島さん(なかじま)だよね?どうしたの?」
私がそう聞くと、彼女は綺麗な笑みを浮かべてこう答えた。
「忘れ物したの。ねぇ、キーホルダー見てない?」
「キーホルダー?あ、もしかしてこれ?」
雪が手を出してそれを見せると、彼女は目の色を変えて、雪からキーホルダーを奪い取った。突然の事にびっくりしていると、次の瞬間、信じられない一言を言った。
「なんであんたが持ってんの?まさか、盗んだ?あたしの大切な物。」
「まさか。たまたま落ちてたから後で職員室に届けるつもりだったの。」
「…本当に?」
「うん。」
「…ふーん、ならいいや、疑ってごめんね?あたしの名前は知ってると思うけど、改めて。あたしは中島玲奈(なかじまれいな)」
「私は佐藤蒼。よろしくね。」
「私は高山雪。」
そう言ってにっこり笑うと、玲奈も笑った。しかしすぐに、玲奈の友達が彼女を呼んだので、その日はそれで会話は終わった。今思えば、この時から恐怖の歯車は回っていたかもしれない。