「店長、お疲れ様でした」

「お疲れ様、また明日ね」

 淡々と毎日を過ごす中で、たまに訪れる驛さんとの時間。

 三十分遅く終わるらしい驛さんを待つために初めて楽器店を訪れると、そこは様々な音で溢れており、新鮮で、驛さんが密かにしていたギターやベースもズラリと並べられていた。

「何かお探しですか?」

「あ、いや。眺めてるだけなので」

「試し弾きも可能ですので、お気軽にお声掛け下さいね」

 にこやかに話しかけてきた店員に頭を下げ、店内を見て回る。

 グランドピアノはなかったが、電子ピアノは何台もあって、子供が楽しそうに猫ふんじゃったを演奏する姿を見て、驛さんがピアノを弾く姿を想像した。