「美衣、いつからそこにいた?」



「……今来たとこ」



美衣はリビングに入って、ドアを閉めた。



美衣は、母さんとの会話を聞いていたのだろうか。



あいつは、何も言わずにソファーに座った。



「母さん、俺が美衣と一緒に東京行ったほうがいいよね?」



「お兄ちゃんが行くの?」



美衣は、驚いた顔で俺を見上げた。



「女の子二人じゃ、変な男に声かけられるかもしれないからな」



美衣は何か言い返したそうだったが、母親の前で彼氏と泊まるとも言えず黙りこんでいた。



「そうね……お兄ちゃんがいたほうが安心ね。
あなたたちは、兄妹だものね」



母親は、引きつった笑顔でそう言った。