【要side】

あいつは、母親には本当のことを言わなかった。



彼氏と行くくせに、女友達と行くフリをしやがった。



「母さん、女の子二人で東京危なくない?」



「そうねぇ、お友達と一緒なら大丈夫だと思ったけど……
少し心配かしら」



「じゃあ、俺が美衣を連れてくよ。
男がいたほうが安心じゃない?」



「そうだけど……お兄ちゃんが美衣と二人で行くの?」



「うん、俺が行く」



「だけど、一泊するし……」



母親は首をかしげて、何か考えてる様子だった。



「母さん、なんか問題ある?」



「だって、あなたたちは実の兄妹じゃないのよ」



母親がそう言った時、リビングのドアが開いた。



振り返ると、美衣がドアノブに手をかけたまま立っていた。