「ただいま。
二人ともどうしたの?」



お母さんは険悪なムードに気づいたのか、私たち二人を見比べていた。



「ねぇ、お母さん。
今度の連休、一泊二日で東京に行ってもいい?」



「東京って、ずいぶん遠いわね。
誰と行くの?」



「絵梨花と……」



お兄ちゃんが隣で何か言いたそうな顔をしていたけど、お母さんに本当のことは言えなかった。



「そうねぇ……
ちゃんと勉強してからならいいわよ」



「お母さん、ありがとう!
今から電話してくる」



私は絵梨花じゃなくて誠也に電話するため、自分の部屋に向かった。