ライオンの檻の前で、私は立ち止まる。



子どもの頃、お兄ちゃんが私を見つけてくれたのは、この場所だろうか。



たてがみが立派で威圧感があるライオンに目をやりながら、私は口を開いた。



「ねぇ、お兄ちゃん。
あんなに可愛いライオンの赤ちゃんも、大きくなったらこうなっちゃうんだね」



「そりゃ、そうだろ。
いつまでも子どもな訳ないし」



「どうして、みんな大人になっちゃうのかな?
どうして、みんな子どものままでいられないんだろ……」



なぜか悲しくなってきて黙ってしまった私を、お兄ちゃんは隣に立って見下ろしていた。