「美衣、行くぞ」



「うん」



私は、お兄ちゃんの後ろにくっついて歩いていく。



小学生の時迷子になったゾウの前に来て、お兄ちゃんは振り返った。



「美衣はコアラがいいのか?」



「ホワイトタイガーでいいよ。
この動物園、ホワイトタイガーが売りなんでしょ?」



子どもの頃は、ホワイトタイガーが珍しい動物だって知らなかった。



まだ幼かった私は猛獣が怖くて、ホワイトタイガーは見ずに帰ってしまった。



「お前、猛獣怖いんじゃねぇの?」



「もう子どもじゃないし……馬鹿にしないでよ」



私はお兄ちゃんを置いて、猛獣コーナーに入っていった。