「美衣、今何してんだよ?
あの男に変なとこ連れこまれてんじゃねぇだろうな」



私のこと、心配してかけてくれたの?



口は悪いけど、お兄ちゃんからの電話が少し嬉しかった。



「変なとこじゃないよ。今、動物園。
一人でライオンの赤ちゃん見てる……」



「一人って……ケンカでもしたのか?
お前、わがままだから」



「そんなんじゃないってば……」



いつもなら『お兄ちゃん、うるさい!』ってケンカになるとこだけど、私は元気のない声で答えて黙りこんでしまった。



「今からそっち行く。
そこで待ってろ」



お兄ちゃんは、一方的に電話を切った。