兄の溺愛がマジでウザいんですけど……《完》

「まだ着いたばかりなのに、ごめん。
また今度ゆっくり回ろうね」



誠也は、持ってくれていた紙袋を私に返そうとした。



「それ、お弁当入ってるの。
誠也持っていって、お父さんと食べて」



「美衣、ありがとう」



紙袋を抱えて走っていく誠也に、私は手を振った。



一人取り残された私は、なんとなく来た道を戻る。



気がついたら、さっき誠也と見たライオンの赤ちゃんのところに戻っていた。



一人でぼんやりライオンの赤ちゃんを見ていたら、バッグに入れていた携帯が鳴った。



「もしもし、お兄ちゃん……」



お兄ちゃんからの電話だった。