兄の溺愛がマジでウザいんですけど……《完》

私たちは、チャペルが綺麗な式場を選んだ。



挙式前に、私とお兄ちゃんは親族控え室に入った。



親戚はほとんどみんな顔見知りだから、親族紹介はしないことになっていた。



「なんか恥ずかしいな、これ……」



お兄ちゃんは、グレーのタキシードを着ていた。



お兄ちゃんはスタイルがよくて、すごくカッコいいのに、なぜか恥ずかしがっていた。



「恥ずかしいことないわよ。
要は背が高いし、よく似合ってるじゃない」



黒い留袖を着たお母さんはそう言いながら、嫌がるお兄ちゃんの写真を撮っていた。



「美衣も、すごく綺麗よ」



お母さんは、純白のウエディングドレスに身を包んだ私を見上げた。



お父さんとお母さんに『私を育ててくれてありがとう』と言いたかったけど、どのタイミングで言ったらいいのか、わからなくなってしまった。



「美衣ちゃん」



「おばあちゃん……」



振り返ると、和服を着た里ばあちゃんが立っていた。



おばあちゃんに会うのは、パパとママのお葬式以来だ。



腰が曲がって小さくなってしまったけれど、懐かしいおばあちゃんの顔だった。



「美衣ちゃん、綺麗になったね」



ウエディングドレス姿の私を見て、おばあちゃんは涙ぐんでいた。



「桐ケ谷さん、美衣を立派に育ててくださって……
本当にありがとうございました」



おばあちゃんはそう言って、お父さんとお母さんに深く頭を下げた。