兄の溺愛がマジでウザいんですけど……《完》

リビングのテーブルに、披露宴の座席表を広げる。



私とお兄ちゃんがソファーに座って眺めていると、お母さんが後ろからのぞきこんできた。



「なんか、こう見ると親戚少ないわね……」



「美衣と俺は兄妹だから親戚かぶるし、仕方ないだろ」



普通なら新郎側と新婦側の親戚がそれぞれ集まるんだろうけど、私とお兄ちゃんはもともと同じ家で暮らす兄妹だった。



それに、一番見てほしい私のパパとママは、もうこの世にはいない。



「そういえば……美衣のお里のおばあちゃん……
美衣の実のママのお母さんは、元気でいらしてるはずよ」



「……そうなの?」



「最初の頃、美衣の写真送ったこともあるし、
一度美衣の顔見せようとしたこともあるんだけど……

美衣はもう桐ケ谷家のお嬢さんだからって、遠慮されてしまって……」



「そうだったんだ……」



パパとママがいなくなったあの日、保育園まで迎えに来てくれたのは里ばあちゃんだった。



お葬式の時も、黒いワンピースを着た私はおばあちゃんの隣に座っていた。



もう顔ははっきり思い出せないけど、おばあちゃんが大好きだった記憶がある。



「おばあちゃん来ていただけるか、連絡してみようかしら……」



お母さんはそう言って、電話台のほうへ歩いていった。