「桐ケ谷、俺のこと考えてくれた?」



誰もいない廊下の隅まで来て、新倉君は口を開いた。



新倉君は今まで気にしてなかったけど、近くで見るとすごいイケメンだ。



日光が当たると少し茶色っぽく見える柔らかそうな髪に、知的なまっすぐな瞳。



育ちがいいのか、人を疑うことを知らないようなくったくのない笑顔をしている。



そんな新倉君に向かいに立たれて、私は彼を見上げることができなかった。



「うん……いきなり恋人って感じじゃなくて……
まずは、お友達から……」



恋人になると、昨日お兄ちゃんに教えられたようなことをされる気がして怖かった。



お母さんに言われた通り、お友達から始めようと思った。