お兄ちゃんは特に行きたい場所がなかったみたいで、新幹線の発車時刻まで東京駅の周りをウロウロしていた。



地元の駅に着いてからも、お兄ちゃんは私が買った紙袋を全部持ってくれていた。



「お兄ちゃん、ごめんね……
少しくらい自分で持つよ」



「お前な……さんざん人に持たせておいて……
もうすぐ家着くだろ」



「ごめん、ごめん。
これだけ持つよ」



私はお兄ちゃんの手から、紙袋をいくつか無理矢理奪い取った。



「どうせ俺は、お前の荷物持ちだろ……」



「そんなことないよ。お兄ちゃんは、大事な保護者です」



「何だよ、それ……」



お兄ちゃんと紙袋を抱えて笑い合っていたら、向かいから歩いてくる人と目が合った。



誠也が、駅に向かって一人で歩いていた。