「あら、柏崎さん、白金さん。おはようございます。｣
全校生徒の名前を覚えているという噂があるほどの彼女はいつもサラリと人の名前を言いながら挨拶していく。
名前を呼ばれた少女達は顔を赤く染めキャー！とアイドルを見たかのようにはしゃいでいる。
「うーん？俊くぅん？誰を見てるんですかー？やっぱり好きじゃないとか言っといてー？高嶺先輩だけを見つめてると？｣
「そういうんじゃねーよ、てかその口調キモイからやめろ！君付けすんな！｣
「あははは、怒んなって｣
ケラケラと可笑しそうに笑いながら裕翔は俺の横を歩く。
はぁとため息をついて下を向いていると、コツコツとローファーの音が近づいてきた。
逃げようとしたがやや逃げるのが遅かったらしく彼女が口を開く方が先だった。
｢ふふ、酒井くん、おはようございます。｣
｢そ、れ、とっ！
佐々木くん、おはようございます♡｣
わざわざ裕翔と分けてしかも俺の方には語尾にハートが着きそうな勢いで言われて、うんざりしてしまう。
｢あっそうそう！佐々木くんには用があるのよ。あとで生徒会室に来て貰ってもいいかしら？｣
これだから捕まりたくなかったのに。
｢…はい｣
結果俺は生徒会長の言うことにみんながいる中、『絶対いやです。』とも言えるわけはなく、首を縦に振ることしか出来なかった。