「俺、今日はもうここで寝れそうな気がする…」

そう言い机に突っ伏するレムの頭を、俺は「起きろ!勤務中だ!」と言って叩く。……コーヒーでも作ってやろう。

俺がコーヒーを作っている間、レムはぼんやりと交番の天井を見上げていたが、ふと思い出したかのように「なあ」と俺に話しかける。

「お前、次はどこの国に行くんだよ」

「行くって…」

「世界平和対策本部!」

レムは天井から視線を俺へと向ける。その目はどこか緊張が隠されていた。

「次の会議はたしか……ロール国だ」

俺の頭の中に、イワンの顔が浮かぶ。俺より高い背丈で、まじないだか魔術に詳しい農家だ。何の野菜か果物を作っているかは知らんが……。時々、怖い一面を見せる。

そんなイワンの暮らすロール国は、一年中雪と氷で覆われた国だ。ドリス国も寒い方に入るが、ロール国はそれ以上だ。……風邪を引かぬようにしなければな。

「……実はさ、あんまりよくない噂を聞いたんだ」

「噂?」

「新聞社に勤めてる俺の友達が話してくれたんだ」

「何なんだ?」

俺の胸に緊張が走る。レムは椅子から立ち上がり、俺の方へと近づく。そして、俺の耳元でささやいた。