「全くお前と言う奴は〜!!」

「きゃあ〜!暴力反対!!」

その光景を見て、小町がクスリと笑う。俺は驚いてリリーを攻撃するのをやめた。

小町はあの事件の後、ずっと暗い表情だった。それを誤魔化すように明るく振舞っていたが、嘘だということはリリーでさえも見抜いていた。

「お二人は本当に仲がいいですね!」

小町はクスクスと笑い続ける。リリーが「そうだよ!」と小町に抱きついた。

今日は桜花国から帰国する日だ。楽しい旅行だった。

「来ていただき、誠にありがとうございました!またお越しください」

春之輔さんたちに頭を下げられ、ジャックが「こちらこそ、長くお世話になりました」と同じように頭を下げる。

「ありがとう」と俺とリリーも言った。

「船着き場まで、お見送りします」

小町がそう言い、旅館の扉を開ける。吹き込んできた桜花国の風を感じるのも、これで最後だ。

船着き場まで馬車で向かうと、もう船が来ていた。

「まずいな…。少し急ぐぞ!」

リリーに声をかけ、荷物を持つ。自分のだけでなくリリーのものも持った。俺の荷物よりも重量がある。