桜花国から帰国しなければならない日が近づいていく。
その日の深夜、ある人物がこっそり旅館を抜け出した。黒いフードをかぶり、闇に溶け込んでいる。
昼間、町を歩いていた時に、黒いフードをかぶった少年とすれ違った。その際に、一枚の小さな紙を手渡されたのだ。
「今夜、二時に旅館の裏通りにある空き家で待っています」
紙にはそう書かれていた。
その紙を受け取った時、ある人物は驚きで声を上げそうになった。しかし、少年は一瞬のうちに人混みの中に消え去っていた。
旅館の裏通りにある古びた空き家に、ある人物は恐る恐る足を踏み入れる。密会なので人が寄り付かない場所がいいとはいえ、まるで肝試しをしているようだとある人物は思った。
「……マット、いますか?」
暗闇の中に、ある人物は問いかける。すぐに闇の中にランプの光がつく。昼間出会った少年だ。
「ルーファス様に頼まれて来たのですか?」
「はい、そうです」
「長旅、ご苦労様です。しかし紙を手渡された時はリーバス様に見つからないか心配になりました。彼は未だにあなたのことを覚えています」
「大丈夫ですよ!俺はあの人を一回出し抜いたんですから」


