「やあやあ、初めまして!私はこの旅館の経営者をしております、一ノ宮春之輔(はるのすけ)と申します。娘がお世話になっております!」

「私はこの旅館の女将をしております、一ノ宮夕子(ゆうこ)と申します。ようこそいらっしゃいました」

春之輔さんと夕子さんは、俺たちと握手を笑顔で交わし、小町に部屋に案内するように言った。

「こちらになります」

部屋は当たり前だが、男女分かれている。俺とジャックは柊の間、リリーは夕凪の間に泊まる。小町は旅館にある自室で寝る。

旅館は五階建てで、俺たちは五階の一番いい部屋を用意してもらったようだ。窓からは、美しい景色が見える。

部屋の中は、畳が敷かれ、初めての感触に驚いた。

桜花国では、初めての体験が多い。

「リーバス、ジャック、遊びに来たよ〜!」

荷物を置いてしばらくすると、リリーが小町の手を引いて部屋に入ってきた。

「リリー、何もすることはないぞ」

俺がそう言うが、リリーは部屋に入り畳の上に座る。

「お喋りすればいいでしょ?」

笑顔で言うリリーに、俺は何も言えなかった。小町の顔が、どこか見守っているように見えるのは気のせいだと思いたい。

俺はため息をつきながら、リリーの頰をつねった。