私の事情を知っていた二人は、すぐに行動を取ってくれた。

各国の貴族や王族に対策本部の話をし、代表者を決め、私は城から抜け出し、長いようで短い自由を得た。



タンバリー国の城では、多くの使用人たちが忙しそうに働いている。国王たちが帰ってきたばかりだからだ。

「クリスタル様!お帰りなさいませ!」

今まで、私を汚物を見るような目で見ていた使用人たちが、私の姿を見ると一斉に駆け寄ってきた。

国王は、私が城から抜け出した後、私の存在をようやく認めた。使用人たちも、認めるしかなかったのだろう。

「お父様がお待ちになっております!」

使用人のその一言や、作られた愛想笑いに嫌気が指す。父親?あの人が?

「さあさあ、お召し替えを!」

使用人の一人が私の手を掴む。他の使用人たちが素早く豪華なドレスや宝石を用意し始めた。

「結構です。国王陛下にはこのまま会います」

私は使用人の手を振りほどき、冷めた目で使用人を見つめた。

立派な玉座が置かれた大広間の扉を開けると、玉座に国王と王妃が優雅に腰掛けていた。私は無表情のまま、一歩ずつ前に進む。

「クリスタル、無事だったのか」

国王が嬉しそうに笑う。私の心には、何も響かない。

「帰ってきてくれてよかった。これで縁談が進められる。お前のお相手は、ノール国のフィリップ王子だ。王位継承権は一番!お前にふさわしい相手だ」

ニコニコと笑いながら話す国王。私は心の中で何度も「大丈夫」と繰り返す。