「……リーバス、私の過去と未来の話をしてもいい?」

クリスタルは涙を流しながら、俺を見つめる。俺はその涙を拭い、「もちろん」と頷いた。

クリスタルは、少しずつ泣きながら話してくれた。

城に閉じ込められ、外に出たことがなかったこと。十歳の時、部屋の隠し通路を見つけ、そこで初めて民の生活に触れたこと。リリー・オクトと出会い、友達になったこと。街に何度か遊びに行ったが、国王にバレてしまい叱られ、街に行けなくなったこと……。

「……私は、ずっとおしとやかなお姫様として生きることを強制させられていたんだ。誰に対しても微笑んで、誰に対しても従順で、意見を言わず美しい装いをして、ダンスや芸術の才能を持つようにされてきた。……でも、本当は自由に憧れてた」

クリスタルは俺の手を自分の手で包む。

「リリーのように生きたかった。作られた自分なんて、自分じゃないみたいだった。世界平和対策本部のリリー・オクトになった時、初めて自分になれた気がして、とても嬉しかったの!初めて仲間ができた。たくさんの国を旅した。とても楽しくて、魔法にかけられたみたいだった!」

クリスタルの過去は、ジャックが言ったように冷たいものだった。

リリー・オクトと名乗っていても、きっと心の中では変えられない血筋に悩んでいたかもしれない。もっと早くクリスタルと出会って、支えてやりたかった。

後悔が、俺の胸を締め付ける。