「でもさ、もしも一緒に飲んでいるのが俺じゃなくてタンバリー国のあのお嬢様だったら、絶対に入れてやってただろ?」

突然リリーのことを言われ、俺は固まる。ウイスキーの入ったボトルをずっと傾けていたので、グラスにウイスキーがあふれ、テーブルに広がってしまった。

「うわ、もったいな…」

そう呟いたレムの胸ぐらを俺は掴み、「お前が変なことを言うからだろ!!」と言った。

名前を聞いただけなのに、頭の中で勝手に思い出が流され、心臓が音を立てる。体温が上がっていく感覚や、頰が赤く染まる感覚に、俺はレムを放して顔を背ける。

ベルがすぐに俺のそばにやって来て、心配げな目で俺を見上げた。その頭を何も考えずに撫でる。そうすれば落ち着くことができる気がした。

「悪りぃ!ふざけすぎた…」

レムが後ろで言う。本音だとすぐにわかった。

「今後から気をつけるように!」

振り向きそう言うと、レムは「イエッサー」と敬礼を返す。そして、こぼれてしまったウイスキーを拭いてくれた。